背景銀河の形状の精密測定は宇宙シアによる暗黒エネルギー研究にとって極めて重要な要素であるが、従来の方法では暗黒エネルギーの詳しい性質を調べるには不十分であることが知られている。我々は銀河の形状測定においてその形にフィットした楕円形の窓関数を用いることで従来の方法による誤差を改良することが出来た。そしてこの方法を用いて銀河団A370の中心領域の弱い重力レンズ解析を行い、従来の方法では検出困難であった暗黒物質の構造を明らかにすることが出来た。 また現在すばる望遠鏡用に開発中の新しい超広視野主焦点カメラの利用を念頭に置き髪の毛座銀河団の弱い重力レンズ解析を行った。髪の毛座銀河団は赤方偏移が0.02と宇宙論的にごくごく近傍の銀河団であり天球上の見かけの面積は10平方度にもなる。このためその中に存在する暗黒物質の部分ハローも十分弱い重力レンズ効果によって検出可能なほど大きいことが期待される。部分ハローの統計的な性質は銀河団形成の理解にとって極めて重要である。我々は髪の毛座銀河団の現在の主焦点カメラによるすばる望遠鏡のデータを用いて、中心部に6個の部分ハローを見つけ、この期待が実際に正しいことを示した。さらに髪の毛座銀河団の全体での部分ハローを発見するために、すばる望遠鏡にプロポーザルを申請し、認められ2011年3月に観測が行われる事になった。
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