研究課題
今年度は、一般のゲージ群とカラー電荷に対する3ループQCDポテンシャルを計算した。またLHC実験におけるトップ・クォークの運動量分布に対する束縛状態の効果を計算した。前者の課題においては、昨年度計算した基本表現に対する3ループQCDポテンシャルの計算を一般化して、一般の表現に対するQCDポテンシャルを計算した。この結果、3ループにおいて初めてカシミアスケーリング則の破れを見出した。その効果の大きさは現在の格子計算結果と矛盾なく、かつ将来的には非摂動的な数値計算でも検出され得ることを予言した。この性質はストリング・ブレーキング現象との関わりも深い。後者の課題においては、ttbar共鳴状態の効果を含めたハドロン・コライダー用のモンテカルロ・イベント・ジェネレーターを開発し、一般にも公開して、LHC実験においてttbar threshold領域も含めて詳細なトップ・クォークの生成断面積・分布を計算できるようにした。ttbar共鳴状態生成の影響で、トップの運動量分布が特にthreshold近傍で有意に変形されることが確かめられた。これは現在進行中のLHC実験におけるトップ・クォークの諸性質の解析に重要な影響を与えると考えられる。更に現在進行中の研究として、3ループQCDポテンシャルの解析的な計算を行なっている。これはまだ誰も達成していない高度な数学を要する計算である。Mellin-Barnes積分表示と多重ゼータ値のシャッフル代数、及び多重和に関する新しく発見した関係式等を使って、マスター積分の百数十ある展開係数のうち、未評価のものを4つまで減らすことが出来た。これについては更に継続して計算して、3ループQCDポテンシャルの解析的な計算を完成するだけでなく、一般的な高次輻射補正の新たな計算方法の確立を目指している。
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