研究概要 |
本研究の成果は,質量数130領域の原子核に対して,核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシッフモーメントを計算すると共に,^<129>Xe原子の電気双極子モーメントを評価したことである。中重核領域のシッフモーメントの理論研究は,これまで平均場模型による計算しか行われてこなかったが,本研究では平均場を超えた枠組みである核子対殻模型により数値解析を実行した。この計算結果により,質量数130領域のシッフモーメントは中性子の波動関数の寄与が陽子のよりも大きくなり,さらに原子核の集団運動の効果を考慮しなければならないことを明らかにした。この成果は,Progress of Theoretical Physics誌に発表した。 また,核子対殻模型により質量数130領域の偶偶核・奇核・奇奇核の系統的な研究を行った。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究はこれまであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用い幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現するように決定した。この研究により,陽子が奇数の奇核や奇奇核の偶パリティ状態と奇パリティ状態のエネルギー差は,Oh_<11/2>軌道の単一粒子エネルギーに核子数依存性を導入すれば再現できることを確認した。この成果は,Physica Review C誌に発表している。 さらに本研究では,質量数100領域の奇奇核に現れるダブレットバンドに対し2核子コア結合模型を適用し,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。計算で得られた波動関数を解析したところ,中性子1個と陽子1個の相互作用は四重極相互作用の効果が大きいことを明らかにした。この成果は,Journal of Physics G誌に発表した。
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