宇宙暗黒物質の正体は未知の素粒子であると期待されており、その有力候補は最も軽い超対称粒子である。本研究では、最も軽い超対称粒子が暗黒物質である場合に着目し、その地上での直接検出のための理論的研究を行いった。それにより以前の計算よりも信頼度の高い予言を行うことが可能になった。次に、そこで得られた方法を使い、超対称模型以外の暗黒物質の候補の素粒子に当てはめ、その直接検出のための核子・暗黒物質の散乱断面積の計算を行った。その一つが、余剰次元模型が予言するベクター粒子の暗黒物質であり、もう一つが電弱相互作用をする暗黒物質である。後者は超対称粒子のウィノやビッグシーノといった粒子が暗黒物質である場合の一般化である。これらの予言を将来の実験計画との比較を行った。 暗黒物質を構成する粒子が、その質量より軽い粒子を媒介して自分自身と相互作用をする場合、非相対論的極限で対消滅断面積は速度に強く依存するようになることが知られている。本研究では、暗黒物質の対消滅断面積が速度依存する場合に着目し、その断面積に対して、宇宙の元素合成、宇宙背景輻射の揺らぎの測定から制限を導いた。特に速度が遅くなるとともに断面積が大きくなる様な模型は、強く制限されることを示した。 LHC実験が始まり、超対称模型など標準模型を超える理論に対して強い制限がつき始めている。一方、カラーをもった粒子と安定な中性粒子との間の質量差が小さい場合LHC実験では探索が困難であることが分かっている。我々はそういった状況において、安定な中性粒子が暗黒物質をなしていれば、地上の直接検出から強い制限が導かれることを示した。
|