研究課題
本年度の當該課題研究の内最も意味の大きいものは、銀河の質量分布は銀河の重力束縛半径内に閉じてゐるのでは無く限りなく遠く迄、即ち隣の銀河の裾野迄廣がってゐることを、大規模銀河サンプルに含まれる弱重力レンズ敷果より導かれる面質量密度の分布を、観測データで束縛された數値シミュレーションを用ひて成分分解することによって示したことである。この解析により銀河の重力束縛内に存する物質は25%に過ぎず、残りは銀河間空間に存する事を示した。但し銀河間空間に分布する物質も銀河を中心とする組織だった分布を持つ。即ち宇宙の物質分布は宇宙全膿に隙間無く廣がってをり、その頂點を銀河と呼んでゐるのである。此結果は宇宙のエネルギー目録に以下の二つの意義を持つ。一つは從來(1970年代より)評價されて來たやうに銀河に随付する質量の総和とした宇宙の總質量密度が宇宙背景輻射より求められた質量密度の4割にしか達しなかった事の意義が明確になると共に此不一致が解消した事である。もう一點はこれ迄鉄損バリオンは銀河ハロー内に存するとされてゐた想像が正しくなかった事である。即ちバリオン總數の内大部分は束縛領域外に存し故に其等は衝撃波加熱を受けてゐず低温に留まる。このことはFukugita-Peeblesの論文(2006)で苦しんだ問題を恐く解決する。但し此問題は今後の精査を必要とすると共に繼續される研究の中心課題となるものである。本年度はこの他Sloan Digital Sky Surveyで取得したデータを解析し銀河内の埃の分布を調べると共に、クェーサー像の重力レンズ像より宇宙論パラメター、特に宇宙項が他の観測と辻褄の合ふ結果を與へる事を示したことである。特にこの後者の結果は1991年に報告者が提案したテストであり20年を經て漸く實現された事になる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Astrophys.J.
巻: 746 ページ: 38(6pp)
Astron.J.
巻: 141 ページ: 47(12pp)
Mon.Not.Roy.astr.Soc.
巻: 417(2) ページ: 916-940