(1)AdS/CFT対応を使って、4次元の共形場の量子論で荷電密度が有限な場合に、その荷電にカイラル異常があると、空間変調をもつ相転移が有限温度で起き得ることを示した。 (2)AdS/CFT対応を非相対論的な共形場理論に応用する方法を探求した。 (3)6次元のカラビ・ヤウ多様体にコンパクト化した超弦理論のBPS状態の数え上げの手法を開発した。特に、IIA理論でカラビ・ヤウ多様体に巻きついている1枚のD6ブレーン上に置かれたD0やD2ブレーンの束縛状態の数はドナルドソン・トーマス不変量の一般化と関係がある。この数は、背景となるカラビ・ヤウ多様体の幾何に依存する量であり、多様体を変形するとその数が変わる、いわゆる壁超え現象があることが知られている。本研究では、昨年度に我々が構成した結晶の融解の模型を使って、D0やD2荷電が大きい極限での束縛状態の漸近的な振る舞いを調べ、それからカラビ・ヤウ多様体の幾何的構造が創発することを示した。また、結晶模型を使って壁超えの現象に新しい見方を与えた。
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