平成20年度はLHCなどの衝突型加速器(コライター)での実験で期待されているように新しい粒子が見つかった場合、どのようにその粒子の性質を特定していくかを追求した。特にスピンの測定はそのために極めて重要だが、非常に難しいことが知られている。私は学生たちとともにスピンの測定の新しい手法を提案した。我々の提案の一番大事な点は、模型の詳細を仮定せず、量子力学の原理だけに乗っ取った手法であることで、理論的なバイアスを受けない手法である。まずは簡単な場合として電子・陽電子のコブイダーでの場合を調べ、この手法が有望であることを示した。一方LHCへの応用を狙って現在走っているドロン・コラダーであるテバトロンでは既にZボソンが大量に作られており、このデータサンプスにこの手法を適用すれば、スピンが1であることが正しく再現できるはずであることを示した。この研究はテバトロン実験に実際に取り組んでいるバークレイのBeate Heinemannとの共同であり、彼女は更に実際のデータへの応用に現在取り組んでいる。この新手法め実験的確立も間近だと考える。 一方、まだ会議での発表の段階だが、ニュートリノの質量の起源を明らかにするために、どのように加速器、地下実験、その宇宙観測が絡み合って結果を出していけるかを議論した。ニュートリノの質量の起源は大統一理論のスケールに近いが若干低いと考えられており、その「低さ」を利用して加速器実験のデータから模型を制限できる。更に地下実験でのニュートリノのない二重ベータ崩壊の探索、低エネルギーの加速器を使ったレプトン・フレ-バーを破る現象の探索、宇宙マイクロ波輻射のBモードの偏極、などが全て絡み合い、提案の「加速器・宇宙・地下からあ素粒子への多角的アプローチ」通りの例になっている。
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