研究概要 |
重力波データ解析に関して,前年度に開発を着手したHilbert-Huang変換(HHT)を用いた方法をさらに推進することを中心に研究を行った。特に,この手法に関して経験がある米国NASA GSFCのJordan B.Camp氏のグループと共同研究を行うことに合意し,共同研究を実施するために,大原と高橋,さらに,本研究に協力している大学院生である平沼悠太が米国に約2週間滞在し,詳細な情報交換と議論を行った。具体的な成果は以下の通りである。 HHTでは,一種のhigh-pass filterを繰り返し適用するEmpirical Mode Decomposition(EMD)を行う。これにより,時系列データからノイズを除去するとともにデータを複数の周波数帯域モード(Intrinsic Mode Function:IMF)に分解する。さらに,それぞれのIMFに対してHilbert変換を用いたHilbert Spectral Analysisを行い,瞬時振幅や瞬時周波数の時間的変動を解析する。実際には,EMDの実行の際に大きなノイズを含む時系列データのenvelopeの求め方ややEMDを停止するための条件設定において,経験則に基づいているところがあり,データの性質に応じて手法の開発が必要である。そのためには,多くの試行錯誤を行いながら,様々な手法の有効性を明らかにしていく必要がある。したがって,本研究では,NASAグループとは全く独立に可搬性の優れたHHT計算プログラムを作成した。さらに,それを用いて,試行的な時系列データとして単純なsine-Gaussianのデータと数値シミュレーションで得られた連星ブラックホールの合体の際に放射される重力波波形データにwhite noiseを付加したものを用いて,詳しい解析を行うことに成功した。
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