研究概要 |
本年度は、ゲージ理論の摂動的力学を系統的かつ数値的に研究する手法の開拓を目的として推進している、レプトンの異常磁気能率における10次QED補正の理論計算に大きな進展があった。発表論文のうちこの研究に関する2つは、Feynman diagramの構造が特殊な種に分類されるものの成果をとりまとめたものである。このうちの1つでは、部分diagramに対してWard-Takahashi恒等式を適用することで明示的な紫外発散の差し引きを避けると、数値計算の精度が向上することを指摘した。その成果は共同研究者である大学院生により日本物理学科でも発表された。12,672個のうち計算を実行していない10次Feynman diagramは、3つのクラスに分類される。3つはいずれもレプトンによる光^光散乱を含むものである。このうちの1つに関しては計算の自動化を敷き、大学院生と共に自動化のプログラムを2つ独立なものを作成することにより計算を完了した。他に関しては、中間的繰り込みを2つの別の方法で行いクロスチェック可能な体制を図り、実際の計算を遂行してきた。この2つの成果は大学院生2人によって物理学会で報告された。 クォークの質量の精密決定と、非摂動ゲージ理論(今の場合QCD)の力学に対する摂動的ゲージ理論(QED)の補正を定量的に計算する方法の開拓のため、ハドロンの質量に対するQED補正の研究を推進している。方法は格子ゲージ理論の枠組みで数値実験を行うことであるため、主要な系統誤差の1つである有限体積効果の大きさを理解する必要がある。発表論文の1つは、特にQED補正に対する有限体積効果の理解をカイラル摂動論に基づき初めて行ったものである。その内容は共同研究者の大学院生によって、海外の研究会、物理学会で発表された。
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