研究概要 |
電磁相互作用の素過程の強さを表す微細構造定数と呼ばれる量の最高精度決定、QEDの精密検証、及び、未発見の素粒子構造の探索のため、レプトンの異常磁気能率に対する10次摂動補正に寄与する全12,672個のFeynman diagramのうち180個を占める、レプトンによるnext-to-leading orderの光-光散乱振幅を完全に含む寄与を、電子及びμ粒子の異常磁気能率に関して数値的に決定した。前年度までに本副課題を遂行する上で使用してきた理化学研究所設置のスーパーコンピューターのリプレイス後、実行時間が飛躍的に短縮したため、年度内に成果を報告するに至った。21年度中に12,672個すべての寄与を求める上で計算の実行開始を果たしており、未報告の寄与に関し、最低求められる精度まで高める計算を継続している段階である。ゲージ理論の非摂動的力学の解明に関しては、その力学による電弱対称性の自発的破れとすべての素粒子の質量の起源を追求する立場から、現段階での実験的制限を無矛盾な強結合ゲージ系の探索を、20年度から格子ゲージ理論シミュレーションの方法により遂行してきた。具体的には、構造群がSU(3)で10個の"クォーク"からなるゲージ系の有効ゲージ結合定数を測定し、大きな値でエネルギースケール依存性の緩やかな領域の有無、または赤外固定点となるか否かを調べることにより、電弱対称性の破れを引き起こす力学として適用できる量子系か否かを判断する。21年度は7月までに蓄積した測定データで得られる予備的な結果について、lattice、その他2つの国際会議などで報告した。以降は、現時点で想定する最大の格子サイズ、16×16×16×16、のデータを蓄積する計算を継続している。
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