本年度は3~4年計算してきた研究のとりまとめを中心に遂行した。レプトンg-2における10次QED補正の摂動計算は、最低次数の光-光散乱振幅を含む4つのタイプのFeynman図の寄与の計算の成果をとりまとめて報告した。共にFeynman図の個数が多いため、それぞれのタイプに対して紫外発散、赤外発散差し引き項を含む数値計算プログラムを生成するプログラム群を開発することで計算を完了した。また、最低次数の光-光散乱振幅から誘導されるレプトンの自己エネルギーをsubdiagramとして含むファイマン図は10次において初めて現れるタイプの計算方法を得て数値計算プログラムを完成したことで、10次の全摂動項を計算する上でのすべてのプログラムを得るに至った。将来の格子QCDによるハドロン諸性質の理解に関する精密化を念頭に据えた、格子(QCD+QED)シミュレーションによるアップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォークの質量の決定に関する論文をとりまとめた。そこではQEDを含む、ストレンジクォークを重いとするカイラル摂動論を構成し、有限体積効果等を含めた解析を遂行することでクォークの質量を決定し、また、格子(QCD+QED)の方法の有用性について議論した。さらに陽子-中性子の質量差における電磁相互作用の効果を第一原理から決定し、それが陽子を中性子よりも重たくする向きに働いていることを示した。電弱ゲージ対称性の強結合ゲージ理論による破れに関する研究に関しては、10-flavor SU(3)ゲージ理論を対象として有効結合定数のエネルギースケール依存性を格子ゲージ理論シミュレーションによって計算してきた。その論文をとりまとめて投稿中である。
|