研究課題/領域番号 |
20540261
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 雅司 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (20270556)
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キーワード | 異常磁気能率 / QED / 高次摂動計算 / 格子ゲージ理論 / conformal dynamics |
研究概要 |
ゲージ理論の量子論的力学が支配する物理現象の理解と、その理解のために必要な物理的諸量を計算するための手法の開拓を目的とする。摂動論的力学としては、レプトンの異常磁気能率に焦点を絞り、最新の実験精度から要求される摂動の10次項すべてを数値的に計算するアルゴリズムを構築し、理論計算を遂行することを目標とする。10次の寄与のファインマン図をゲージ不変な部分集合に分割した場合に、4個の部分集合に相当する寄与に対する結果を、23年度に学術雑誌掲載の論文としてとりまとめた。特に、そのうちの一つの部分集合は、8次のquenched-type diagramに一個のレプトンのループを挿入して得られるdiagramで、総計2,072個のファインマン図からなる。なお、現時点において成果を報告していないものの個数は残り2個となった。ゲージ理論の非摂動力学に関しては、電弱対称性の力学的な破れを量子論的な力学によって引き起こす上で適切なゲージ理論の探索を行っている。計算を開始した段階での当該研究の進展状況から、基本表現のディラックフェルミオンを10個の含むSU(3)ゲージ理論に着目し、赤外極限でconformalなのか、あるいは、カイラル対称性の破れを引き起こす力学なのかについて調べてきた。具体的には、Schroedinger functional boundary conditionと有限サイズ効果によって定義される有効ゲージ結合定数のスケール依存性を、格子ゲージ理論のシミュレーションによって決定してきた。3年間に渡る計算の結果、赤外極限でconformalの可能性が高い、ということが分かり、成果を学術誌掲載論文として取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にレプトンの異常磁気能率に対する10次摂動補正に関し、本年度中に研究によって、2つのゲージ不変な部分集合のファインマン図を除いた結果について成果を学術紙掲載論文としてとりまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
電弱対称性の自発的な破れを誘発する上で妥当なゲージ理論の力学を探索するため、一年半前より2カラー、特にフレーバー数が6のゲージ理論に焦点を絞り、格子ゲージ理論による数値シミュレーションを行ってきた。3カラーのQCDとは顕著に異なる数値データを得てきた。それがフェルミオン場の質量が十分小さい系の力学の本質を表しているのかについて結論を得る上で、妥当かつ実施的に測定可能な物理量を吟味する。並行して一回り大きな規模の計算を遂行する可能性を考慮し、プログラムの高速化を検討していく。
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