研究概要 |
(1)ベクトル型相互作用を含むNJL型の有効模型を用いて、カラー超伝導とカイラル相転移を含むQCD相図を荷電中性の条件のもとで調べた。カイラル相転移とカラー超伝導の境界は揺らぎが大きく、QCDの臨界点の数は1,2,3,4,0のいずれも可能であることが分かった。ギャップレス超伝導相の不安定性の問題がベクトル相互作用の導入によって少なくとも部分的に解決されること示した。 (2)散逸を含む相対論的流体方程式を用いてQCD臨界点での密度および熱揺らぎの評価を行い、臨界点では、比熱比の発散が支配的なために密度揺らぎは強度を失い、熱揺らぎのみが顕著に増大することを明らかにした。さらに、臨界点で密度揺らぎが縮減する理由を明らかにするとともに、高エネルギー重イオン衝突でQCD臨界点の存在と位置を検証する有力な方法として、重イオンの入射エネルギーの減少とともにマッハコーンが消失していくことを観測することを提案した。 (3)くり込み群法を用いて所謂二次の散逸を含む相対論的流体方程式を導出した。力学系の強力な縮約法を用いたたほとんど仮定無しの微視的な導出のため、これまでの「導出」で曖昧に設定されていた「接続条件」が必ずしも正しくないことが判明した。すなわち、Eckartに由来しIsrael-Stewartらも採用している局所静止系の定義が下部のボルツマン方程式と整合的でないことが明らかにされた。
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