本年度の一つの重要な成果は、クォーク物質における非一様構造の研究が挙げられる。最近カイラル対称性の回復に伴う非一様相の出現が話題になっているが、我々は一種の密度波状態(二重カイラル密度波)について数年前に既に研究を行い発表している。この仕事は、現時点の見地から非一様相に関する研究の先駆的な役割を果たしたと見なされている。そこで以前の研究の深化、拡張、現象との関連などを現代的観点からさらに議論するいい機会となった。まず非一様相発現の物理的機構を明らかにし、固体物理における密度波などとの関連で議論されているフェルミ面のネスティング効果と類似の機構が働くことを示した。また、以前の二重カイラル密度波の議論を対称性の破れの効果を取り入れて拡張できることを示した。結果はいくつかの国際会議で既に発表されており、現在論文を準備している。 もう一つの特筆すべき成果として、クォーク物質の相対論的磁性に関する総合報告を、NOVA社から出版される本の一章として出版されることになり、現在印刷中である。これにより、専門雑誌での総合報告とは異なりより幅の広い読者を対象に我々の研究が紹介されることになった。また、中性子星と状態方程式に関する本の出版に関しても数章の分担執筆を依頼され現在執筆中であり、非専門家の読者に中性子星の物理の魅力を発信できることを期待している。 その他、中性子星内部での非閉じ込め転移の証拠を重力波の観測によってどのように観測されるかという問題について論文を発表し、観測されるスペクトルの特徴を明らかにした。
|