研究概要 |
本研究の目的はバリオン共鳴、エキゾチックハドロンの構造を解明していくことにある。本年度は(1)光子による中間子発生反応によるバリオン共鳴のスペクトル(2)ストレンジダイバリオン共鳴に関して以下の研究成果をあげた。 1. 中間子発生反応の解析により得られた振幅を用い、前年度開発した解析接続の方法を適用して散乱振幅から核子共鳴極のエネルギーを抽出した。さらに散乱振幅の共鳴極のresidueから核子共鳴の遷移電磁形状因子を抽出する方法を開発した。このように共鳴極のresidueとして曖昧さなく共鳴の電磁形状因子を導いた研究は世界でも例がなく非常に重要な核子共鳴の情報を得ることが出来た。 今年度はP33,P11,D13共鳴に注目して解析を行った。P33,D13共鳴に関しては極の位置、電磁形状因子ともに従来の予備研究と矛盾ない結果が得られ、中間子雲の効果が形状因子の運動量移行が小さい領域で非常に大きな寄与をすることが見いだされた。これにより従来のクォーク模型の困難を解決することが解った。一方ハドロンの分子的共鳴状態と言われているP11に関する研究から、'Roper'共鳴はπΔ閾エネルギー近傍にある異なるリーマン面上の2つの極から構成されることが解った。これらの研究成果は学術雑誌に投稿中である。 2. ストレンジダイバリオンであるKNN共鳴の共鳴エネルギーの解析を進めた。今年度はストレンジダイバリオン共鳴エネルギーのよくわかっていないKN相互作用の模型依存性を調べた。カイラルユニタリ模型が予言するエネルギー依存型KN相互作用を用いると従来の模型とは異なり2つのストレンジダイバリオン共鳴が現れることが解った。この結果は、ストレンジダイバリオン共鳴の実験的研究によりKN相互作用模型を検証するあらたな可能性を与えた。
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