研究概要 |
ブルックヘブン国立研究所のRelativistic Heavy Ion Collider(RHIC)加速器での高エネルギー原子核衝突実験では、宇宙初期で存在していたと予想される高温高密度状態を作り出しその物性を研究することが目的である。今年度は、ジュネーブにあるCERNのLHC加速器からの実験結果も出始めた。そこで、我々は,LHCの実験結果がこれまでRHICで成功してきたモデル計算でどこまで再現できるかを確認した。 ハドロン衝突の高エネルギー極限で出現されると考えられているカラーグラス凝縮(Color Glass Condensate,CGC)状態を考慮にいれた計算(MC-KLN)は、RHICにおいては、生成された粒子の数をうまく再現できるが、LHCにおいても再現できることがわかった。しかしMC-KLNモデルはブリーパラメータがあるなど、改良すべきところがある。特に、グルーオンの分布関数を仮定せずにrunning couping Bahtsky-Kovchegov(rcBK)方程式の数値解を採用できるようになった。これからrcBKを使った詳細な計算をする予定である。また、MC-KLNを初期条とし、格子QCDの結果を考慮した新しい状態方程式を用いた流体計算とLHCの結果を比較し、LHCエネルギーにおいても、RHICと同様に、生成された系の粘性はあまり大きくないことがわかった。
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