研究概要 |
量子有限多体系の力学の特徴として、原子核は自ら平均場を作りその運動モードとして振動型運動や回転型運動が位置づけられる。研究代表者は、Hartree-Fock理論やRandom Phase(乱雑位相)近似理論等の微視的平均場理論により原子核構造の研究を行い、多くの論文を発表し、高い評価を得てきた。当該研究では、現在までの研究成果を踏まえ、非対称原子核の構造の先駆的研究を発展させることを目的とする。非対称原子核とは、中性子数と陽子数の大きく違う原子核を意味する。このような原子核はアイソスピン量子数が大きく、しばしば不安定な原子核になる。また、非対称原子核とは形が球形ではなく、陽子と中性子の変形が違う原子核、大変形(super deformation, hyper deformation)や非軸対称変形している原子核も意味する。このような非対称原子核のさまざまな形や運動様式を、微視的平均場理論により研究し、その独立粒子運動および集団運動の特徴を解明し、新しい原子核像を確立することを本研究の目的とする。具体的には、次のようなテーマを中心に研究を行っていく; (1)多体対相関と連続状態の非対称不安定原子核での競合および相転移の理論的研究 (2)非対称核物質の性質と原子核の中性子スキン、スピン依存励起関数の関係の非相対論および相対論的平均場近似を用いての研究。 (3)テンソルカとスピン軌道力と殻構造の関係および新しい魔法数。 (4)安定核および不安定核を含めた有効相互作用およびエネルギー密度関数の開発およびそれを用いての非対称原子核の未知の変形および変形共存の研究。
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