研究概要 |
平成21年度は、数年来研究している2つの研究テーマ 行列模型による時空・物質生成と拡大超対称性の部分的・自発的破れに関して、区切りとなるしっかりした成果が得られた。それに加え、ほぼ20年前に集中的に研究していた2次元場の量子論及び行列模型に関し、素粒子物理学の文脈での新たな展開が開け、2次元から出発し、0次元を経由し、4次元ゲージ理論の結果を導くという立場から、独自の突破口を開くことができた。吉岡氏と協力して、行列模型におけるorientifoldingの効果により、one-loop長距離展開の範囲内で、時空点とその鏡像の間の自己相互作用引力が働くことを示した。最大超対称性を課すIIBあるいはUSp行列模型に於いては、このことはorientifoldingのもとでの4次元的固有値分布の生成を強く示唆する。丸吉氏・湊氏と協力して、N=2超対称性を部分的かつ自発的に破る藤原・糸山・阪口模型では、低エネルギー定理がFeynman図の相殺によって実現していることを示した。NGフェルミオンの性質の、MSSMを超える模型の文脈でのさらなる解明が期待される。丸吉氏・大田氏と協力して、A_(n-1)quiver行列模型のloop eq.から生じるspectral curveと、Witten-Gaiotto形式でのSU(n), N_f=2n, N=2超対称ゲージ理論のSeiberg-Witten curveとの等価性、パラメーター間の同定等の成果を挙げた。ごく最近、大田氏と協力して、beta-deformed行列模型からN=2 Nekrasov関数及びそこから派生する自由エネルギーのq展開を計算する方法を編み出し、Jack多項式とNekrasov関数を関係づけることに成功した。この仕事は既に当該分野研究者によって使用され始めており、決定的な進歩をもたらしたということができる。
|