研究概要 |
2008年度には有限温度非平衡状況におけるFPU模型,Φ4乗模型などの物理的な振舞を研究しました.特に,FPU模型に場の理論で質量項に相当する項を採り入れると,熱伝導度の振舞がFPU模型,Φ4乗理論とも定性的に異なり,系のサイズ依存性が温度とともに変わるという結果を得ました.サイズ依存性が無いbulk behaviorを持つ場合からある場合へと連続的に移り変わるという意味で興味深いと思われます.これを含めた結果については論文として発表しました.Φ4乗理論,FPU模型を含めた一般的な模型について温度の空間依存性の非線型性と線型応答理論との関係について結果を得ているので現在これに関する論文を推敲中です.有限温度の非平衡状況における物理的な振舞から,一見非線型に見える現象のどこまでが本質的に線型応答理論で説明できるかが明らかにできると考えています.さらに,有限温度の非平衡物理についてのD. Kusnezov氏との共同研究について議論し,問題をより明確にし,計画を打ち合わせました. 有限温度の本質は原子レベルにおけるゆらぎで有り,このゆらぎのスペクトラムを直接測定し,それを理解する研究を三井隆久とともに行いました.日常的に存在するゴムや生物資料などさまざな物質の表面のゆらぎを直接測定し,その結果を物質の物理的な性質と結びつけることができました。この測定法は比較的容易に今まで測定できなかったような物体の表面の有限温度の揺らぎスペクトラムを測定し,理論的な解析を用いてその物質の性質を求められるので意義が大きいと考えています。この結果は論文として投稿中であり,もう一本論文を推敲中です.さらに,この研究の方向上を発展させたものを現在継続して行っています.
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