研究概要 |
今年度は有限温度における揺らぎを直接測定し,そのスペクトルの物理的性質を理解する研究を重点的に進めました.これに関しては,主に2つの方向を追求しています.1つは,様々な物質の種類による振動の振る舞いの差の特定とその理解です.特に,固体,液体,そして複雑流体について振動を測定した結果を理論的に解析しています.2つ目の方向は,表面振動に限らず他の振動を測定した結果を物質の物理的な性質から理解することです.現在この研究についての論文を推敲中で,さらに大きな進展が得られると思っています.これらの研究は三井隆久氏と共同研究で行っています.内容が既存の研究と比べてユニークであり,画期的な面があると考えています. 時間依存性のある系における非平衡系現象の分析は現在,比較的単純な模型で,物理的な振る舞いを場の理論の性質から理解することを行っています.この研究は解析的な手法とシミュレーションの両方を用いて行っています.これは,実際の重イオン衝突などにおける研究を念頭において,それを簡単化した状況でダイナミックスからどのように有限温度や化学平衡が得られるかを調べています. 場の理論において粘性の振る舞いを第一原理から理解する研究については,境界条件を導き,数値計算をすることを続けています.境界条件があってダイナミックスにより粘性が生じるので,正しい境界条件を入れることが重要です.適切な境界条件を導くための条件を整理することができつつあると考えています.
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