この研究の目的は、バリオン共鳴状態、また、近年発見されたq-q-qbar-qbar系の可能性があると考えられている重いクォークを含む中間子、および、1GeVより軽いスカラー中間子などを対象とし、クォーク内部自由度を考慮したハドロンにおけるクォーク反クォークペアの影響を明らかにすることである。また、それを通じて、低エネルギー領域でのハドロンの性質や、ハドロン構造を作り出すダイナミクスに対する知見を得て、非摂動論的なQCDの性質を現象論的に理解しようとすることである。 (1)研究対象 具体的には、(1)Λ(1405)、N*(1440)を始めとする正負パリティのバリオン共鳴状態、(2)また、Ds0*(2317)±、Ds1(2460)±、X(3872)等のパリティが正であるか、或いは、正と予想され、q-q-qbar-qbar系の可能性があると考えられている重いクォークを含む中間子、および、(3)1GeVより軽いスカラー中間子(f0(600)、f0(980)、a0(980)、κ(800))などである。 (2)研究手法 以下に挙げるいくつかの手法を用いて研究対象にアプローチすることにより、モデルによらない系の特質を明らかにする。すなわち、(1)バリオン共鳴状態に対しては、(qqq)と(qqq)-(qqbar)の配位が結合した状態を、中間子に関しては、(qqbar)(qqbar)配位と軌道部分が励起した(qqbar)とが結合した状態を仮定したクォーク模型を用いる。(2)ハドロンを基本粒子とし、その間の相互作用をクォーク模型から導出する。また、(qqq)、(qqbar)コアに対応する状態を、散乱状態に埋め込まれた束縛状態として取り入れた、リップマンシュヴィンガー(LS)方程式を解く。(3)グリーン関数の方法で、クォークコアを通じて生成される状態の質量スペクトルを計算する。(4)複素スケーリング法で、クォーク模型、ハドロン模型共に、しきい値近くの共鳴状態を調べる。
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