研究課題/領域番号 |
20540285
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
夏梅 誠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (90311125)
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研究分担者 |
岡村 隆 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30351737)
前田 健吾 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10390478)
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キーワード | 素粒子論 / 超弦理論 / AdS/CFT双対性 / 臨界現象 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究では、超弦理論のAdS/CFT双対性をQCDや強相関の物性系へ応用することを目的としている。これらの系では強結合の物理の理解が必須であるために、理論的な計算はこれまで困難であった。AdS/CFT双対性によると、強結合の場の理論はブラックホールと等価だとされ、ブラックホールによるこれらの物理の解析の可能性が開かれた。本年度は主に以下のテーマで研究をおこなった。 1)ホログラフィック超伝導の物理 昨年度に引き続き、AdS/CFT双対性にあらわれるブラックホールの一種、ホログラフィック超伝導の物理を調べた。これは、一種の超伝導/超流動をあらわす系である。昨年度、このモデルで磁場をかけたときに渦糸ができることを示したが、電磁場のもとでの渦糸の運動を調べた。またAdS/CFTで調べられている系では、ずり粘性率とエントロピー密度の比は強結合で普遍的な値を持つことが知られているが、ホログラフィック超伝導に対してこのずり粘性率を調べた。ホログラフィック超伝導でも普遍的な値を持ち、常流動相でも超流動相でも同じ値になることが判明した。ただし、一部のホログラフィック超伝導ではこの結果が成り立たないこともわかった。 2)ゲージ理論における動的臨界現象 QCDの相図には、二次相転移を起こす臨界端点が存在すると考えられ、理論的にも実験的にも大きな注目を集めている。臨界点では様々な物理量が特異的な振る舞いをするが、QCDの場合、動的にはHohenberg-Halperinの分類でモデルHと呼ばれる振る舞いとされている。我々はAdS/CFTを使い、改めてこの問題を調べた。ラージ-Nc SU(Nc)ゲージ理論では、モデルHの効果は1/Nc^2で抑えられることが判明した。このため、モデルHの効果は実際の重イオン実験では観測が難しいものと考えられる。
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