我々は、「ゲージ/重力対応」の典型的な例として、有限温度における超対称量子力学(1次元のゲージ理論)と10次元のブラックホールの間の双対性を研究した。特にゲージ理論の強結合領域における振る舞いが、古典的なブラックホールによって記述される事が予想されている。ゲージ理論側の計算は、大変難しいと考えられてきたが、我々は、最近開発した新しいシミュレーション法を応用することにより、これを進めている。平成20年度においては、次のような成果が得られた。 1ゲージ理論側でWilsonループを計算することにより、重力側で対応するブラックホールのSchwarzschild半径が読み取れることを、数値的に示した。この結果は、ゲージ理論側から時空の情報を如何にして読み取れるかを示すとともに、ブラックホールの表面まで、量子的にゆらいだ超弦が広がっている事を示す重要なものである。 2さらに、重力側でストリングの拡がりに起因する高階微分項の補正を考慮することにより、内部エネルギーの温度依存性がどのように変更されるかを解析した。この解析結果は、ゲージ理論側で得られた内部エネルギーの温度依存性と良く一致することが示され、ゲージ/重力対応が上記の補正を含めて成立することを裏付けた。 3ラージNリダクションの考え方を用いることにより、これらの研究を4次元の超共形ゲージ理論に拡張できることを、弱結合領域において具体的な確認した。
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