本研究は、特異なカラビヤウ空間上への超弦のコンパクト化における最近の進展に基づいて、素粒子の標準模型を越える現実的な模型を構成してその理論的性質及び現象論的帰結を調べ、LHC稼働後に予想される素粒子理論研究の新しい方向性に超弦理論として対応することを目的とした。今年度は、特異な複素3次元カラビヤウ上の超弦の時空超対称モジュラー不変かつ離散表現も含んだ新しい分配関数を、ユークリッド2次元ブラックホール、いわゆる葉巻型空間を含む共形的場の理論を用いて決定し、E6の27表現が「葉巻」型余剰次元の先端に局在することを示した。さらに、フレーバーの自由度を入れるためにミニマルモデルをカップルさせて、より現実的な三世代モデルを提唱した。 また、M理論の低エネルギー有効理論である11次元超重力理論と、ブラックリングのようにエキゾティックな解か最近発見された5次元超重力理論は実は非常によく類似しており、その類似性は背後にある「多元体」すなわち複素数と四元数の違いによって理解できることを示した。この事実を用いて、5次元で最近求められたホライズンが歪んだブラックホール解のGPSモノポール極限は、多元体を四元数に置き換えると知られたあるユークリッド8次元の重力インスタントンとちょうど対応することが明らかになった。
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