研究課題/領域番号 |
20540287
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
溝口 俊弥 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (00222323)
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キーワード | 超弦理論 |
研究概要 |
1.一般に、弦理論で加速膨張を実現するためにはブレーンなどの特異点が必要であり(no-go定理)、またブレーンによって時空をワープコンパクト化するためには負の張力をもつブレーンが必要であることが知られている。タイプII弦におけるオリエンティフォールドのようなオブジェクトはヘテロティック弦では定義できないので、ヘテロティック弦における負張力をもつブレーンの起源は明らかではなかった。これを明らかにするために、本年度はアティヤ・ヒッチン多様体と呼ばれるハイパーケーラー多様体が遠方で負のNUTチャージをもつタウプナット空間に指数関数的に近づくという事実を利用して、その近似として得られる負チャージのタウプナットを正チャージのタウプナットとともに格子状にギボンズ・ホーキング計量の形で無限個配置し、それを周期的に同一視することによって超弦のコンパクト化を実現した。そのT-双対は正と負張力をもつ、ランドール・サンドラム的なブレーン系となる。この系は超対称性を半分保つ、一般化されたSU(2)ホロノミーをもっており、この一般化されたスピン接続をゲージ群に標準的に埋め込むことによってヘテロティック弦の背景場を実現することができる。すなわち、ヘテロティック弦の負の張力をもつブレーンは、アティヤ・ヒッチン多様体のT-双対として自然に理解できることが示された。 2.超弦理論は、素粒子のゲージ相互作用のみならず重力相互作用もまた統一する。超弦の低エネルギー有効理論は超重力理論であり、それをトーラスにコンパクト化すると一般に非コンパクトな対称性が現れる。5次元ミニマル超重力理論を次元リダクションしたときの対称性は、1998年に当該研究代表者らによりSL(2,R)およびG_<2(+2)>あることが示された。その対称性を用い、5次元ミニマル超重力における最も一般的なカルツァ・クライン ブラックホール解を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異な多様体及びその双対であるブレーンの交差を用いたコンパクト化模型における大きな問題であった、負のテンションブレーンのヘテロティック弦理論における起源が明らかになり、また余剰次元方向にウィルソンラインをいれることにより三世代模型の構築に目処がつくなど、当初計画での課題に答える成果が得られつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
超対称性をもつある系の対称性の自発的破れに伴う南部・ゴールドストーン場を、現実のクォーク・レプトンとみなす考え方は古くからあるが、それをヘテロティック弦におけるブレーン系からくると考える本研究は他に類をみない。実際、非線形シグマモデルでは(正味)三世代が得られており、それとブレーン系との比較を一層進めてより詳細な対応を調べ、湯川結合定数の階層構造やミキシングなどの現象論的研究に繋げるべく研究を推進する。
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