本研究は、核磁気モーメントを質量数40以上の中性子過剰核を含めた幅広い領域にわたって系統的に決定するために、新しい手法による不安定核のスピン偏極生成法を確立することを目的としている。これを実現するために必要な核偏極生成装置は、(a)芳香族分子中の電子スピンを整列させる励起光源、(b)電子スピン整列を陽子偏極へと移行するための電子スピン共鳴装置、(c)陽子の偏極度を測定するための核磁気共鳴装置、そして(d)標的チェンバーと電磁石で構成される。初年度は(a)-(c)について製作や改良を行った。電子スピン整列を得るための励起光源としてYAGレーザーを用いているが、ピーク出力は高いものの、デューティー比が小さく陽子を十分に偏極させる事ができない。そこで、光励起効率を上げるために、YAGレーザーからの高出力短パルス光の平坦化を行った。そのための光学系を大学院生の協力のもと設計・開発を行い、1m×0.6mとコンパクトなサイズで、3nsのパルス幅を34nsまで拡大することに成功した。また、これと平行して電子スピン共鳴装置と核磁気共鳴装置の開発・導入も進め、それぞれ所定の性能が達成されている事を確認した。さらに核偏極を生成する不安定核の供給装置であるRFイオンガイド型オンライン同位体分離装置の開発も進め、中重核領域の中性子過剰不安定核の安定供給を実現している。今年度以降、さらに偏極生成装置の整備をすすめ、システムとしての完成を目指している。
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