本研究は、核磁気モーメントを質量数40以上の中性子過剰核を含めた幅広い領域にわたって系統的に決定するために、新しい手法による不安定核のスピン偏極生成法を確立することを目的としている。これを実現するために必要な核偏極生成装置は、(a)芳香族分子中の電子スピンを整列させる励起光源、(b)電子スピン整列を陽子偏極へと移行するための電子スピン共鳴装置、(c)陽子の偏極度を測定するための核磁気共鳴装置、そして(d)標的チェンバーと電磁石で構成される。これらの装置のうち、(d)標的チェンバーに含まれる陽子偏極生成装置を開発・製作を行った。NMRコイルとマイクロ波共振器とを両立するために各々を外部より移動可能な機構を導入し、周波数帯の異なるNMRとESRに対してインピーダンス整合を取ることに成功している。今年度以降は、陽子偏極生成テストを行い、偏極生成パラメータを最適化する。さらに交差偏極法を適用して陽子偏極を他の核種に移行し、今回提案した手法の実証と確立とを行う。
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