本研究は、レーザー干渉計型重力波検出器の入射光学系での使用を想定し、干渉計からの戻り光を分離除去する新しい方式を提案して原理検証を行うものである。この実験には光共振器とふたつの位相変調器を用いる。位相変調器の間の距離は変調周波数に対応する電磁波の真空中での波長の1/4に選び、それぞれの変調器で変調指数1.2の位相変調を印加する必要がある。テーブルトップの光学実験装置で原理検証をするために、重力波検出器の実機で使用される変調周波数より比較的高い周波数で動作する位相変調器が必要となる。平成20年度に位相変調器を構成するためのニオブ酸リチウム結晶を調達し、ガラス強化型PEEK材を切削加工して結晶のマウント台を作製した。 本年度はまずこの結晶を市販の周波数シンセサイザ(最大出力10Vp-p)で直接駆動するための共振型昇圧回路を設計・製作した。光共振器を用いた位相変調指数の実測により、第一変調器では変調周波数51MHzにおいて変調指数0.67(目標量の56%相当)、第二変調器では周波数64MHzにおいて1.18(目標量の98%相当)を達成した。さらに、共振型昇圧回路を介して変調結晶にDC電圧を印加する検討も行った。これは将来、位相変調器がマッハ・ツェンダー型の干渉計の内部に組み込まれることが予定されているため、その動作点制御の自由度を持たせるためのものである。レーザー干渉計型重力波検出器での真空槽内使用を想定し、同軸ケーブルと組み合わせた昇圧回路を設計した。 次に、両結晶の昇圧回路の共振周波数を60MHzに再調整し、原理検証実験の光学系に組み込んだ。変調結晶の個体差のため片方の変調器で必要な変調量が実現できておらず、完全なアイソレーションが達成できていないものの、光共振器の順周回光・逆周回光の透過率対称性の破れが観測できた。定量的には、逆行光除去率(強度比)で0.68であった。
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