研究概要 |
昨年の研究で解析手法をほぼ確立したK_L→π^0π^0X(214)、X(214)→μ^+μ^-過程の最終的解析をすすめた。このX粒子はスカラーゴールドスティーノ、あるいは超対称性理論から予想される軽いヒッグズ等の候補となるなど、興味深いものである。結果としてこの事象は観測されず、214MeVの粒子生成に関しての生成・崩壊分岐比の上限値1.6×10^<-6>(90%C.L.)を得、同時にK_L→π^0π^0μμ4体崩壊の上限値9.3×10^<-7>を得た(大学院生の緒方がKAON09会議に結果を報告)。 上の過程の上限値をそれ以上改善するには統計的に限界が来たので、解析の重点を終状態が全て中性粒子となるK^L→π^0π^0νν過程に移した。実験的に困難であるゆえに、これまで殆ど研究されていなかった過程で、標準理論では小林・益川ユニタリティー三角形の頂点の実数部を示し,E391a実験のメインモードであるπ^0ννと相補的関係にある。標準理論による予言値は10^<-13>と小さいが、標準理論を超える過程には高い敏感である。データのスキムは基本的に4つのγクラスターのある事象なので、以前のものをそのまま使用でき、モンテカルロシミュレーションにより、νν有効質量が数MeVの低質量からX(214)を包含する領域までの測定感度、及び主たる背景事象の排除法の研究を進めた。K^Lの主崩壊モードであるπ^0π^0π^0過程からの混入を抑えたうえで、bifurcation法により、全データで予想される混入数0.2事象程度に抑えられた。さらに最適化を推し進め、最終的に10^<-6>まで崩壊分岐比の上限値(現存するリミット値からの1ケタの改善)に制約をっけられることが予測される。全データに対する最終カットを定め、来年度の早い時期に結論を出す予定である。
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