長基線ニュートリノ振動実験OPERAは2年目の本格的なデータ収集を行った。2008年の約1700個に対して2009年のデータ収集では約3700個のニュートリノ反応の候補を標的内に蓄積することができた。これらニュートリノ反応の起きたブリックを取り出し、X線と宇宙線を照射した上でブリックを解体して乾板を現像し、解析担当の日本やヨーロッパの各大学に輸送する。この一連の作業がブリックハンドリングで、本研究の分担者や研究協力者はLNGSに滞在して、大きな貢献を行った。日本に到着した乾板はまず東濃スキャンニングセンターでシート化され、その後、超高速飛跡読取装置(S-UTS)を用いて反応の精密測定と短寿命粒子の崩壊探索が行われる。その結果、すでに複数の崩壊候補を検出することができた。 また、OPERA実験共同研究者の協力を得て、CERN PSで2種類の磁場印加型エマルション検出器の照射実験を行った。1つの検出器は単純なスペーサー2層のエマルションスペクトロメーターで、運動量5GeV/cと10GeV/cのπビームを照射した。もう1つの検出器は5層の鉛板とOPERAフィルムからなるECCをエマルションスペクトロメーターで挟んだもので、2GeV/cと4GeV/cの電子を多く含むビームを照射した。これはECCとスペクトロメーターとの組み合わせにより、磁場中電子の解析可能性を調べる目的である。前者の検出器への照射からは、フィルムのアラインメント(位置合わせ)ができれば、10GeV/cにおいても十分な運動量測定精度が得られる可能性を示すことができた。後者の検出器についてはまだ解析中である。予備的な解析から、シミュレーションによる分析とほぼ同様な繋ぎの効率で再構成が可能であることがわかった。一方、いずれの検出器においてもリファレンス用のビーム照射と磁場中でのビーム照射の間にフィルムが10ミクロン程度スリップしていることが観測され、検出器製作上の課題も明らかになった。
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