大強度ビームの通過に耐えうる強度、冷却性能、遠隔メンテナンス性等を備えたビーム膜の開発・実用化は、J-PARCのような大強度陽子ビームを用いた実験を実現するには必要不可欠なものであり、非常に重要な意義を持つ。大強度ビームライン用ビーム膜の一例として、J-PARCニュートリノ実験施設の一次陽子ビームラインの真空系と標的用ヘリウムガス容器を分離する真空膜に関して、その遠隔メンテナンスの方法の研究を行った。ビーム膜は、いったんビームを通すと高度に放射化する。またそのため、遮蔽体で囲まれており、ビーム膜を取りだすためには、クレーン等を遠隔操作することで、狭い空間を通す必要がある。したがって、その移動の状況を、何らかの方法で遠隔モニターする必要がある。今回は、テレビカメラを周辺に複数設置し、その映像を見ながらクレーンを遠隔操作してビーム窓を移動する、という方法を模擬し、試みた。ガイドする機構を十分事前に準備しておけば、この方法で問題ないことが確認された。また、マニュピレータを備えたJ-PARCニュートリノ実験施設のターゲットステーションのメンテナンスエリアで、ビーム窓の遠隔操作での分解について、基礎的な試験を行った。マニピュレータで操作を行うには、その動作に合わせた分解の機構が必要なことが再認識させられた。最後に、JPARCニュートリノ実験施設に実際に入っているビーム膜を用いて、ヘリウムガス循環装置でヘリウムガスを循環させ、流量や圧力が設計どおりであることを確認した。これらの研究は、高エネルギー加速器研究機構、英国RAL研究所、カナダ・TRIUMF研究所の技術者と共同で行った。
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