研究課題
超伝導磁束量子ビットの研究においては、これまでに、3個のジョセフソン接合からなる回路形式の素子の研究が最も進展している。この素子における問題点のひとつは、系の動作を決定する最重要なパラメータである、エネルギーギャップの最小値が試料作製時に固定されてしまい、適切なエネルギーギャップを実現することが困難である点である。この問題を解決できる回路形式として、4個のジョセフソン接合を2つのループに配置した回路形式が提案されている。平成20年度には、この回路形式の素子に重点をおいて研究を実施した。エネルギーギャップを測定するために、マイクロ波共鳴の観測によるエネルギー分光測定を行った。最初に作製した試料では、制御電流ラインと量子ビットの結合が強すぎて共鳴ピークが観測できなかったが、この結合を弱めた試料を作ることで、エネルギー分光が可能となった。実験の結果、エネルギー分散曲線を制御電流によって制御できることを実証することができた。実験結果に対する理論的説明はまだ十分に行えていないので、これが次年度の課題のひとつである。重要な実験結果として、エネルギー分光実験において、励起エネルギーに2つのブランチが観測された。この結果は、通常の量子ビットの基底状態と励起状態が更に2つに分裂していることを強く示唆している。理論計算により、試料のパラメータが適切な範囲にあるときにこのようなエネルギー分裂が生じることがわかった。このように4つの量子状態が比較的簡単に実現できることは、超伝導量子回路の応用面において、非常に重要な意義をもっている。次年度には、この現象に関して、理論的および実験的に更に研究を進める計画である。
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