分子線エピタキシー成長中の反射電子回折(RHEED)強度振動の起源として、従来、表面のステップ密度、ブラッグ条件から外れた場合の電子波の干渉、原子の表面密度、2種の表面再構成構造の比などが提案されてきた。本研究では、成長中の表面形態をモデル化した表面からのRHEED波動関数を求め、入射電子方位に沿った原子列の密度によってRHEED強度振動が起きる条件を明らかにした。Si(001)表面上に成長する場合を例にとって計算した結果、ブラッグ条件下で、電子波が干渉することでRHEED強度振動が起きることを見出した。この条件下では、1原子層の高さの差による電子波の位相差は2π/3で、このため2原子層を周期とするRHEED強度振動が起きることが明らかになった。 この結果は、これまで直接示されることがなかったRHEED強度振動の起源を、RHEED波動関数の計算から明らかにすることができることを、具体的に示したもので、今後、電子の入射条件、基盤結晶などを変えて、いくつかの主要な系におけるRHEED強度振動の起源解明の基礎となる。とくに高さの異なる表面層からの干渉が、起源となっていることを明らかにできたことは、重要な結果である。 この研究の基礎となるRHEED波動関数の計算法については、表面の代表的なレビュー誌であるSurface Science Reportsに論文が掲載された。また、上記のRHEED強度振動の起源に関する結果については、現在論文投稿を準備している。
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