研究課題/領域番号 |
20540323
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
後藤 敦 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主幹研究員 (30354369)
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研究分担者 |
端 健二郎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, 主任研究員 (00321795)
清水 禎 独立行政法人物質・材料研究機構, ナノ計測センター, グループリーダー (00354366)
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キーワード | 半導体物性 / スピンエレクトロニクス / 光物性 / 核磁気共鳴 / 光ポンピング / 動的核偏極 / 交差分極 |
研究概要 |
固体内の原子核スピンは通常の条件下では無偏極状態にあるが、動的核偏極技術を用いると「超偏極」と呼ばれる非平衡偏極状態を人工的に作り出すことができる。この超偏極は次世代ITにおける主要技術である半導体スピントロニクスや固体量子計算機、あるいは次世代先端分析技術である磁気共鳴型走査プローブ顕微鏡や偏極中性子散乱法などに技術革新をもたらすと期待されている。我々は、これまで半導体用の動的核偏極技術を独自開発してきた。本研究の目的は、この技術により実現した「半導体内の超偏極核スピン系」を舞台に出現する物理現象について、その本質を偏光と多重磁気共鳴技術を用いて明らかにすることである。4年計画の2年度である本年度は、下記の研究を行った。 1.システムの構築と手法の開発: 前年に引き続き、必要となるシステム(装置および制御系)と手法(シーケンス)の開発を行った。 2.化合物半導体の超偏極状態における多重共鳴測定: 前項で開発したシステムを用いて、光照射下での偏極の多段転写機構について研究を行った。本年度は、光照射下における核スピンの偏極速度のサイト依存性から、光励起された電子スピンが核スピンを偏極するときの超微細相互作用を同定する手法を開発した。また、同手法を、半絶縁性を持つ2種類の化合物半導体「鉄ドープInP」と「ノンドープGaAs」に適用した結果、前者では主に局在電子と近隣核スピンとの間のテンソル(双極子)型相互作用、後者では主に浅いドナー準位にトラップされた電子とその波動関数の中に含まれる核スピンとの間のスカラー(フェルミ接触)型相互作用が、それぞれ偏極機構となっていることが明らかとなった。
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