研究概要 |
本研究の主要テーマである、3d遷移金属化合物系の硬X線光電子分光(HX-PES)におけるTi_4O_7の金属絶縁体転移に伴う電子状態変化の機構解明において大きな前進があった。チタン酸化物は近年、白色顔料、光触媒、光電極材料のみならず、親水材料、揆水材料などの新しい用途が開発され、基礎、応用の両面から研究が盛んに行われている。その中にはTi_nO2_<n-1>(n=3~9)の組成で表わされる古くから知られているマグネリ相とよばれる特異な組成と構造をもった一連の化合物がある。これらは金属-非金属転移を示したり,極低温まで金属的でしかも反強磁性であったりする奇妙な性質を示す.Ti_4O_7はその中でもカーボンよりも電気伝導性が高いことや電気抵抗が温度変化によって3ケタの変化を二回も容易に起こす(つまり3種類の電子相が存在する)ことで古くから知られている物質である。しかしながら、その各相における電子状態やその伝導機構の全容ついては今日に至るまで、謎のベールに包み隠されていた。本研究は硬X線光電子分光を用いてベールの裏に隠されていた三つの顔の正体に迫った。まず、150K以上の相と115K以下の相は、それぞれ通常の金属相、半導体相とほぼ同じであることを明確に示した。更に上記の二つの相(金属相と半導体相)に挟まれた第三の相が金属でもなく半導体でもないとても奇妙な相であることを発見した。 我々の成果は国際的に評価を受け、2009年5月にアメリカのブルックヘブンで開かれる国際会議においても招待講演として発表をおこなった。
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