ナノチューブ状ハロゲン架橋白金錯体の物性研究において、格段の進展があった。 1)4角柱白金錯体[Pt(C_2H_8N_2)(C_<10>H_8N_2)I]_4(NO_3)_8 京大理・北川教授(錯体化学)、阪大基礎工・若林准教授等(X線構造解析)、東大工・岡本教授(光学観測)等と共同研究を展開し、表記物質の基底状態電子相を解明した。光学伝導度スペクトルの理論・実験比較、X線散漫散乱スペクトル解析を通して、基底状態には2種の混合原子価相が混在することを突き止めた。 2)3角柱白金錯体 次いで3角柱型類似物質の混合原子価相についても、群論を駆使して系統的に解明した。 合成・実験に先行する形での理論研究であるが、不均質電荷密度波状態、部分金属電荷密度波状態等、フラストレーション幾何学構造に起因するユニークな電子相を発見した。錯体化学グループでは、当該物質合成を目指した研究が進められている。 一方、共役系高分子ポリアセンの光物性研究にも踏み出した。ポリアセンには、構造異性にあたる2つのPeierls歪み状態が存在する。これらはエネルギーが縮退するものの光学的には異性を示すことは、研究初年度に示したところである。時間異存Hartree-Fock法を用いて、両状態間の光誘起相転移の可能性を直接シミュレートしたところ、『一方通行』に似たユニークな相転移現象の可能性が指摘された。
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