研究概要 |
1.高圧力下の磁化および伝導測定 α-Dy_2s_3の高圧力下における磁化および電気抵抗を精査し、各物性の磁場依存性と比較した。磁場の印加は、磁化および電気抵抗の異常ピークを抑制し広温度域化させるが、磁化ピークは低温側、抵抗ピークは高温側にシフトする。また圧力の印加は抵抗ピークをほぼ同じ温度下で(一度やや下がって戻る)抑制するのに対して、磁化ピークはむしろやや強められて低温側に広域化する。α-Dy_2s_3における伝導異常は圧力と磁場で抑えられるが、磁気相転移による磁気構造の変化のみに起因しているのではないことが判明した。 2.磁場中比熱測定 α-R_2S_3(R=PらNd,Sm,Gd,Tb,Dy)の比熱を測定し、磁気転移に伴う比熱ピークを観測した。0.36Kまでの比熱測定により、α-R_2S_3(R=Pr,Nd,Sm)において低温側に新たな相転移が確認され、磁気エントロピーの解析からR1,R2サイトにおける逐次磁気相転移によるものであると考察した。磁場中比熱の測定により、α-Tb_2S_3の逐次磁気相転移が磁場により抑制され、低温側の転移は少なくとも0.36Kまでは発現しないことが確認された。Gd系を除くα-R_2S_3においては、各Rサイトの磁気モーメントが異なる温度で独立に秩序化し、R2サイトの秩序化は磁場の影響を強く受けることが推察された。 3.ホール係数およびゼーベック係数測定によるキャリア判定 α-R_2S_3(R=Gd,Tb,Dy)のホール係数およびα-Tb_2S_3のゼーベック係数を測定し、本系化合物の多数キャリアは室温においては電子であり、低温では伝導に及ぼすホールの寄与が強くなることが判明した。α-Tb_2S_3の場合に、負のホール係数が高温側の磁気転移点(12.6K)において明確にアップターンするなどの現象が見られ、詳細な実験の継続が今後も必要である。
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