研究概要 |
三元系NMAD(Nomagnetic Atom Disorder)ウラン化合物において、短距離型f-d(p)混成はその磁気メモリ効果などスローダイナミックス現象に重要な寄与をすることを考えられる。我々は、物性物理学の立場から、ウラン化合物における磁気メモリ効果の物理描像を記述することおよび発現機構を解明するために、新規ウラン化合物磁気記憶材料を探索すると共に、U_2TSi_3とU_2TGa_3(T=遷移金属)を主なターゲットに選択し、その磁気メモリ効果に関する実験研究をし続けてきた。平成21年度はU_2PdSi_3の純良単結晶を用いて、c面内において磁場中冷却(FC)磁気メモリ効果の実験測定が完成しました。FC(H=50Oe)過程中、それぞれT_w=5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0,10.5Kで磁場は零まで下がり、試料を1時間保温した。その後、再び磁場は50Oeまでかけて、4.5Kまで温度を下がる。4.5Kから温度上昇とともに磁化率を測定し、スピングラス物質特有な磁気メモリ効果が観測された。また、測定した曲線と参考曲線(通常のFC磁化率曲線)の差(ΔM_<FC>)の絶対値は8.5K付近でピークが現れ、この温度付近で磁気メモリ効果は最も顕著であることを明らかにした。尚、磁場中冷却後、8Kと5Kで磁気緩和の測定結果により、二つ異なる温度で繰り替えて長時間緩和を通った後、残留磁化は元の状態に回復し、明瞭な磁気メモリ現象が観測された。これらの結果は零磁場中冷却(ZFC)磁気メモリ測定結果とよく一致する。U_2AuGa_3の多結晶試料に対して同様な測定が行い、類似な磁気メモリ現象が観測され、19K前後で最大のメモリ効果が認められた。その他、参考物質として、幾つの3d電子系Cu-Mn合金および4f電子系稀土類金属間化合物を作成し、それら物質の磁気メモリ効果も測定した。
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