1.高エネルギー加速器研究機構(KEK)、放射光実験施設(PF)のBL3Cに構築され、高度化された、楕円偏光白色放射光X線を利用するX線磁気回折(XMD)実験システムの詳細な性能、特に高計数率特性(10^6cpsまで多重波高分析可能)を明らかにし、その結果を論文にて公表した。 2.希土類強磁性体CeRh_3B_2の特異な磁気特性(磁化がCe^<3+>イオンから期待される値の1/5程度と小さいにもかかわらず、キュリー温度がCe・非磁性元素間化合物では最も高い)を明らかにするために、昨年度に引き続きXMD実験を続行した。測定対象は、その磁気異方性(六方晶c軸が非常に強い磁化困難軸)のため、hk0逆格子点となる。XMDのLS分離特性を利用し、三種類の実験配置(S配置、L配置、T配置)にて、スピン磁気形状因子、軌道磁気形状因子、全磁気形状因子を、それぞれ測定した。昨年度は、主としてS配置とL配置によるスピン磁気形状因子と軌道磁気形状因子の測定を行なったが、本年度は全磁気形状因子の測定も行なった。これは、XMD実験ではS配置、L配置、T配置で結晶の磁化方向(量子化軸方向)が異なり、T配置で測定される全磁気形状因子が、S配置で測定されるスピン磁気形状因子とL配置で測定される軌道磁気形状因子の和となることは自明ではないからである。予備的な解析では、S配置によるスピン磁気形状因子とL配置による軌道磁気形状因子の和は、T配置の全磁気形状因子にほぼ等しい、という結果が得られた。これは、磁化容易軸に平行である面(ab面)内では、S配置、L配置、T配置の何れか二つの配置の実験により、磁気形状因子のLS分離可が能性であることを示すものである。
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