研究概要 |
ハニカム格子系Na_3M_2SbO_6(M=Cu, Ni, Co)およびNa_2M_2TeO_6(M=Cu, Ni, Co)を取り上げ、その特異な磁性を調べている。今年度は、特にMサイトがNiおよびCoの系について磁性や磁気構造を調べた。多結晶試料を作成し磁化率と比熱を測定した結果、Na_3Ni_2SbO_6, Na_3Co_2SbO_6,Na_2Ni_2TeO_6, Na_2Co_2TeO_6はそれぞれT_N=18K, 6K, 34K, 25Kで反強磁性転移することがわかった。また、磁化率の実験データに対して、4次までの高温展開の式をfitして最近接J_1,第二近接J_2,第三近接J_3を求めた結果、いずれもJ_1が強磁性的、J_3が反強磁性的、J_2はJ_1,とJ_3に比べて小さい値であった。J_1とJ_3の相互作用が競合するので、磁気転移温度以下でどのような磁気構造を持つのかは簡単に予想することはできず、興味が持たれる。粉末中性子回折実験により磁気構造を調べた結果、Na_3Ni_2SbO_6とNa_2Co_2TeO_6ではハニカム格子内に強磁性的な鎖が存在し、その隣り合う強磁性鎖が面内で反強磁性的に整列する磁気構造をもつことがわかった。スピンはハニカム面に垂直な方向を向いている。ただし、両者の違いとしては、Na_3Ni_2SbO_6では面間方向の磁気相関長が短く、面間方向のスピン同士の磁気秩序はあまり成長していないが、Na_2Co_2TeO_6では面間方向の隣り合うスピンは逆向きに揃っており、3次元的な長距離磁気秩序であることがわかった。Na_3Co_2SbO_6では上述の2つの物質系とは全く異なる中性子scan profileが観測され、簡単には磁気反射に指数が付けられず長周期構造等の非自明な磁気構造であることもわかった。これらの結果により、ハニカム格子を持つ一連の系について、磁気的振舞いの理解が進んだ。
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