1.Cr_2O_3/Pt界面の磁気構造に対する外部電場効果を第一原理計算により解析した。ゼロ外部電場の場合、界面Crと第二層目のCr間の磁気配列が反平行(AP)配列に比べ平行(P)配列の方がエネルギー的に安定であるが、外部電場を印加するとAP配列とP配列間のエネルギー差が小さくなることがわかった。これは、交換バイアス材料として期待されているCr_2O_3/Pt/強磁性体構造に対して、外部電場印加により、強磁性体/反強磁性体界面に起因する一方向磁気異方性(交換バイアス)を制御することが可能であることを示唆する。 2.界面に0やB不純物が混入したFe/MgO(001)界面の構造安定性と結晶磁気異方性における外部電場効果を第一原理計算により解析した。B原子はFe層内部に留まるより界面に析出する方がエネルギー的に安定であること、界面のB原子により垂直磁気異方性が消失し、結晶磁気異方性の外部電場効果がほとんど無くなることがわかった。これは界面のB原子により界面Fe層-MgO層間距離が増大し、Fe dz^2-O pz混成が弱まるためである。 3.ノンコリニア磁性を考慮したスピン依存電流計算をするための第一原理計算手法を完成させ、Fe薄膜やスピンスパイラル構造に対して計算を行い、磁化配列による電気伝導の変化を再現した。また、温度効果を考慮して計算手法として、原子配列を考慮したクラスタ展開法とモンテカルロ法を導入した原子配列や磁気配列に関する相安定性の計算プログラムを完成させ、電子系の温度効果を考慮した第一原理計算手法としてFermi分布を導入した計算手法を検討した。
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