研究概要 |
パウリ限界を超える超伝導臨界磁場をもち三重項超伝導が指摘される(TMTSF)_2X(X=PF_6,ClO_4)塩を^<13>C-NMRを用いて検証する。^<77>Se-NMRでは微細な、スペクトルのシフトや経常変化を検出することができなかったが^<13>C-NMRなら可能となる。その目的で分子の特定の位置のみを選択的に^<13>Cに置換した分子を合成し、^<13>C-NMRを行った。 昨年度までに開発した新しいTMSTF分子の合成ルートでえた片側置換TMTSF分子を用いて(TMTSF)_2X(X=PF_6,ClO_4)塩の大型単結を作成した。近年、この物質の超伝導圧力領域で非フェルミ液体的挙動が電気伝導度より報告され、SDW揺らぎとの関連性が注目されている。SDW揺らぎを直接観測する手段としNMRは最適な実験方法なので、(TMTSF)_2PF_6塩の圧力下^<13>C-NMRを行った。NiCrAlとCuBeの2重シリンダー構造の圧力CELLを用いることより室温で2.6GPaまで印加えることが可能となった。その結果、非フェルミ液体的挙動の観測される領域でSDW揺らぎがあることを見出し、また非フェルミ液体的挙動が消失する圧力でナイトシフトと(T_1T)^<-1>がほぼ温度変化せず、フェルミ液体的挙動を示し、SDW揺らぎが抑制されることを見出した。また、コリンハ因子は、超伝導の臨界圧力以上では、ほぼ一定の振る舞いをし、大きな圧力依存性は観測されなかった。このことは、SDWのネストするフェルミ面以外は、超伝導の転移温度に寄与しないことを示している。フェルミ液体的挙動の見られる圧力領域では、超伝導が消失することより、SDW揺らぎが超伝導発現のメカニズムに関与していることを実験的に明らかにした。
|