本研究の目的は、相分離状態にあるマンガン酸化物系で発現する非常に鋭いステップ転移の起源を解明するために、磁場誘起の絶縁体金属転移を示す層状マンガン酸化物単結晶の格子歪み(格子定数)、弾性定数、磁化及び磁気抵抗を温度・磁場の関数として精密に測定することである。 今年度は、層状マンガン酸化物単結晶のステップ状の転移を外部変数(圧力と電流)の関数として研究を実施した。また、層状マンガン酸化物単結晶において、電場誘起の巨大抵抗変化を世界で初めて観測した。以下に本研究成果の概要を述べる 1. 層状マンガン酸化物単結晶の磁気歪みの圧力効果及び電流効果 圧力印加により、ステップ状の振る舞いは抑えられ、高温側で観測されるブロードな変化に置き換わる。この結果は、圧力効果が強磁性相互作用を強めることにより、ステップ状の変化を抑制したものと考えられる。また、磁場中冷却後に試料の強磁性転移は促進されるが、ステップ状の変化が抑制されるという以前の結果と一致している。外部変数を電流に設定し、一定電流を印加して磁歪の測定を行った。2mA程度の高い電流値の場合には、ステップ状の鋭い変化は、ブロードな連続的な変化へ移行する。これに対応して、磁気抵抗の振る舞いも同様に変化する。 2. 層状マンガン酸化物単結晶の電揚誘起の巨大抵抗変化 電流印加により、5mA程度の電流値で2桁程度の抵抗の減少が観測された。この急激な変化は、電荷整列クラスターの存在と関連すると予想される。
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