本研究の目的は、相分離状態にあるマンガン酸化物系で発現する非常に鋭いステップ転移の起源を解明するために、磁場誘起の絶縁体金属転移を示すマンガン酸化物の格子歪み(格子定数)、磁化及び磁気抵抗を温度、磁場及び圧力の関数として精密に測定することである。今年度は立方晶マンガン酸化物の磁場誘起ステップ転移を物理圧力と化学圧力の関数として研究を実施した。また、電子ドープ型マンガン酸化物の磁性及び輸送特性の圧力効果を測定した。以下に本研究成果の概要を述べる。 ・マンガン酸化物の磁気歪み及び磁化の圧力効果 零磁場基底状態が凍結した相分離状態にあるEu系マンガン酸化物の磁歪及び磁化の圧力効果を測定した。母物質に対する圧力印加により、ステップ状の磁化の振る舞いは消失する。一方Gdイオンで置換した試料の等温磁化曲線は圧力印加によりステップ状の転移は増強される。これらの結果は、元素置換や圧力印加により一次相転移から二次相転移への交差が起きていることや凍結した相分離状態の解放などによって説明が可能である。 ・電子ドープ型マンガン酸化物の磁性及び輸送特性の圧力効果 マンガン元素をアンチモンで置換することにより、低温で磁化の符号反転が観測された。この弱い反磁性の起源を探るために圧力を印加して磁化の振る舞いを調べた。また、磁気的フラストレーションの影響を調べるために交流帯磁率の測定も行った。
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