研究概要 |
本研究課題の目的は,磁束芯やナノストライプ状態という局所的構造に現れる非自明な秩序状態の痕跡を段階的に明らかにしていくことにより,銅酸化物超伝導における最大の謎である擬ギャップ状態(バルク)の素性に迫ることである.今年度の研究実績は以下の通りである. 1.空間変調型d波RVB状態の安定性に関する研究 昨年度の研究において,反強磁性を伴わない空間変調型d波RVB状態が存在することを見出した.この状態が,系の乱れに対していかなる応答を示すか,特に非磁性不純物に対する安定性について,d波超伝導状態と比較対照を行った.CuO_2面外の不純物によって,空間変調型RVB状態がより安定化することが分かった. 2.実空間における不均一性の運動量空間における解析手法の開発 本研究課題が対象とする,実空間における構造をもつ状態,および系に内在する乱れ等の実空間的情報を,運動量空間にマップして解析するための計算手法を確立した.点状の非磁性不純物によって誘起される共鳴状態はd波超伝導のノード付近に,CuO_2面外の乱れによる不均一超伝導はアンチ・ノード付近に,それぞれBrillouin zone内でのすみ分けがなされていることを見出した.また,反強磁性状態がd波超伝導状態と共存して誘起された場合,そのエネルギーギャップはフェルミ面と反強磁性のreduced Brillouin zoneが交差する点を中心に形成されることを見出した.
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