研究概要 |
本研究の目的は2つの超伝導ギャップを持つ特殊な超伝導体MgB_2の磁化とトンネル測定通して、多ギャップ超伝導ならではの新しい磁場中超伝導現象を探索しその機構を解明すること、さらにそれをdisorderにより変化させ、制御することである。22年度は、Mgを川で置換したMg_<1-X>Al_xB_2(x=0.12,0.21)単結晶を用いた渦糸相図の解明、MgB_2およびBa(Fe_<0.93>Co_<0.07>)_2As_2単結晶(同じく2ギャップ超伝導体)のギャップ測定を試みた。 Mg_<1-X>Al_xB_2のトルク法を用いた磁化測定ではx(disorder)の増加とともに、c軸方向のH_c2がほとんど変化せず、ab軸方向H_c2は減少すること、さらに磁化のピーク効果により定義される秩序一無秩序相転移線は純粋なMgB_2単結晶に比べより低温・高磁場の狭い領域に押し込められることが観測された。これらは、通常の1ギャップ第二種超伝導体で予測されるふるまいと逆行し、2ギャップ超伝導ならではの特徴であるといえる。MgB_2では大きな超伝導ギャップを形成する2次元的σバンドの電子軌道はB層内にありMg層に入るdisorderは小さな超伝導ギャップを形成するπバンドにのみに影響する。これによりπバンド超伝導の実質的なH_c2は上昇し、σバンドのクリーンリミット領域で起こる秩序-無秩序転移に影響を及ぼすが、σバンドのH_c2を超えるまでに至らないと考察すると結果をよく説明できた。 ポイントコンタクト法を用いたトンネル測定では、Ba(Fe_<0.93>Co_<0.07>)_2As_2単結晶の2ギャップ構造を観測することに成功した。測定結果をBionder-Tinkham-Klapwijk理論を用いてフィットすることにより2.2-2.5meVと7-8meVの2種類のギャップエネルギーを導出できた。MgB_2の超伝導ギャップ観測は到達できなかった。
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