研究概要 |
本計画の研究対象である希土類金属間化合物YbAl3C3は4f電子系としては初めての例となる、結晶格子の幾何学的フラストレーションを背景としたスピンダイマー形成を生じる物質である。本年度の成果を下記に記す。 ・放射光X線回折実験を行い、80Kの相転移において微小な構造変化を発見した。80Kの転移温度を境に、六方晶から斜方晶へ対称性が低下するものの、Yb原子の変位は0.2%程度と僅かであることが構造解析より明らかになった。この微小な構造相転移が低温でのスピンダイマー形成に一役買っている可能性が高く、Yb,A1,Cの低温相での原子位置を確定できたことは今後、考察を進める上で大きな意義を持っている。[発表論文2件目] ・27A1核による核磁気共鳴(NMR)/核四重極共鳴(NQR)実験を行い、80Kの相転移に伴うA1位置での内部磁場と電場勾配の変化を調べた。NQR測定からは対称性の低下に伴う共鳴線の分裂が観測され、放射光X線回折実験より明らかになった構造相転移モデルと矛盾の無いことが分かった。NMR測定からは80K以下で共鳴線のブロードニングが観測され、その特性温度が磁揚とともに高温側に移動することが明らかになった。これは、80Kの構造相転移で4f電子状態が変化していることを強く示唆する重要な結果である。[発表論文3件目]
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