今年度は、磁性不純物の内部構造だけでなく、複数の伝導バンドによる効果も考慮した超伝導転移温度増大の理論を構築し、理論の応用として、LaOs_4Sb_<12>超伝導体において磁性原子であるPrの不純物としての役割を明らかにした。これは、通常の超伝導体が磁性に対して不安定であるという従来の理解に一石を投じ、バンドの多重性、あるいは軌道自由度の役割がいかに重要であるか再認識するきっかけとなる成果である。特に、 1.不純物を含む単一バンド超伝導転移温度の理論を2バンドに拡張し、バンドと不純物局在電子軌道との混成を考慮した、より一般的な理論を構築した。 2.バンド間散乱が強められるような不純物の構造、特にPrの一重項-三重項についてPrの周囲の特異な構造を考慮した結果、転移温度増大が可能である。 3.一重項-多重項の構造をもつ不純物の場合、磁気的散乱と非磁気的な散乱が競合するので、転移温度増大のためにはどちらか一方が支配的である必要がある。 ことを示した。 以上の成果は、日本物理学会において発表し、また現在論文として投稿中である。
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