H22年度は、鉄系超伝導体FeSe_xおよびLiFeAsの圧力下超伝導、層状コバルト酸化物Li_xCoO_2における物性探索を主な研究テーマとした。FeSe系については前年度までにTcの特徴的な2段階上昇と第2の超伝導相の存在が示唆するP>2GPaでの超伝導体積分率の急減少を報告したが、3GPa以上で到達するT_cの最大値(T_<cmax>)は試料に依存して20-25Kであった。H22年度は試料の純良化を行い、FeSe系における真のT_c-Pの関係を求めることを目的とした。新しい試料は原料を粉末から粒状のものに変更し焼成ステップも大幅に変更し、異相であるhexagonal相をほぼ完全に消失させた。T_c-Pの関係を調べたところ仕込み組成0.80≦x≦0.98においては一様にT_<cmax>=15-20Kとなり、0.99≦x≦1.0の試料においては1GPaのT_cの極大が消失することが新たに明らかになった。他の文献ではT_cmax=30Kと報告するものもあり、T_<cmax>が大きく異なる起源を明らかにすることが今後の課題となる。LiFeAs系においても、試料の純良化を行い昨年度に引き続きT_c-Pの関係を調べ圧力中におけるFe層からのAs高さh_<As>とT_cの相関の有無の検証を行った。結果として、5GPa以上でT_c、h_<As>ともに変化が滞り一定となる傾向が見られ、両者には強い相関があることが示唆された。また、Li_xCoO_2系の単結晶試料の作製を、Na_xCoO_2単結晶を出発物質とする新しい方法で行い、Li量xを系統的に変化させながら低温物性を調べた。その結果、Liの拡散開始温度T_FとLi量xの関係を直流磁化測定を通して見出した。また、0.46≦x≦0.71で見られたT_s=155Kにおける一次相転移はT_F=130K以下でのLiの秩序化を常に伴って起こることから何らかのCo^<3+>/Co^<4+>の電荷整列相の形成が起こると考えている。
|