研究概要 |
本研究ではフラックス法や高圧合成法を駆使して、充填スクッテルダイト化合物の純良単結晶を育成し、dHvA効果や電子輸送効果を通じて、この物質が示す異常現象についてのの研究を行った。具体的には、 (1)強磁性を示す近藤格子SmFe_4P_<12>のフェルミ面の観測と電子輸送効果測定 (2)Geをカゴに持つ新充填スクッテルダイトRPt_4Ge_<12>(R=La, Ce, Pr, Nd)の電気的磁気的特性とNMR測定 (3)相転移を示さないPrOs_4P_<12>のフェルミ面の観測 である。(1)に関しては、dHvA効果の観測に成功し、約10m_oを持つ重いフェルミ面の観測に成功した。しかしながら、バンド計算から予測される、48バンドに対応した、さらに重いフェルミ面の観測には至らず、より高磁場での測定が必要である。(2)に関しては格子定数、電気抵抗、磁化を系統的に調べ、特にLaPt_4Ge_<12>のBCS的超伝導状態や、CePt_4Ge_<12>が擬ギヤップを示すこと等、NMR測定から微視的にその電子状態を明らかにした。(3)に関してはPrFe_4P_<12>やPrRu_4P_<12>の異常な相転移を示す物質の比較物質の研究であるが、この物質のdHvA効果の観測に成功し、そのフェルミ面を明らかにした。その結果、ネスティング構造をフェルミ面が持たないことが明らかとなり、また、結晶場状態の違いから、フェルミ面の特異な形状と、Prの4f電子が持つ多極子相互作用がPrFe_4P_<12>やPrRu_4P_<12>の異常な相転移に関与していることを指摘した。
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